産科の当事務所の解決事件例real estate
VBACによる産科脳性麻痺後の0歳児死亡事件
VBACによる産科脳性麻痺後の0歳児死亡(福島地裁平成25年9月17日)の判決の抜粋は,以下のとおりです.
「1 被告には以下の各注意義務があったところ,被告はこれらをいずれも怠った(以下「本件各過失」という。)。
(1)ア VBACは,帝王切開歴のない妊婦の経膣分娩と比較して子宮破裂のリスクが高く,子宮破裂が発生した場合の胎児又は新生児の予後が不良であること,子宮破裂が発生した場合には迅速に帝王切開を実施することが必要であることから,VBACを実施する場合には,主治医には ,少なくとも,分娩が始まった後胎児心拍数陣痛図等を用いて,子宮破裂の徴候がないか継続監視を実施する態勢を整える義務があるものといえる。
イ しかし,被告医院においては,被告が分娩開始から出産まで一人の妊婦に付き添い,胎児心拍数陣痛図による継続監視を実施することはできず,看護師は継続監視をすることができなかったというのであり,継続監視が可能な助産師は出勤もしていなかったものである。ほかに子宮破裂の徴候を直ちに捉えるための何らかの措置が実施可能であった形跡も見当たらない。そうすると,被告は,少なくとも子宮破裂の徴候を捉えるため継続監視を実施する態勢を整える義務を怠っていたものということができる。
(2)ア 上記のとおりVBACには帝王切開歴のない妊婦と比べてリスクが高く,かつ,VBACを施行せずとも2度目以降の妊娠の際にも帝王切開による出産は可能であり,その方がリスクは低いものであった。それあれば,帝王切開歴のある妊婦に対しては,2度目以降の妊娠の際にVBACを試みるか,帝王切開による分娩を試みるかの選択の機会を与えることが重要であり,そのためには,当該妊婦の主治医には,VBACのリスクを説明するとともに,VBAC以外の選択肢もあること,当該医院でのVBACを実施する態勢等当該妊婦がVBACによる出産を試みるか,帝王切開による分娩を試みるかを選択するために必要な情報を説明する義務があるということができる。
イ しかし,被告は原告○○○に対し,「子宮破裂」の具体的文言さえ用いずに,手術ではなく普通にお産は進めていく旨,いざという時はいつでも手術できるようにはする旨等の説明をするにとどまり,子宮破裂の危険性,胎児又は新生児に与える影響,反復帝王切開の方がリスクは低いことなど何ら説明をした形跡がなく,上記説明を怠ったものといえる。(説明義務違反の過失)
(3)ア 上記のとおり,VBACを実施した場合には子宮破裂のリスクが高く,子宮破裂が発生した場合には,迅速に帝王切開術を実施し,胎児の娩出を行う必要があったことから,被告には,子宮破裂の徴候を捉える態勢を整える義務とは別に,原告○○○に子宮破裂の徴候がないかを継続監視する義務もあったものといえる。
イ しかし,被告は,上記認定のとおり,子宮や胎児の状態を連続的かつ同時に監視することが可能な胎児心拍数陣痛図を,原告○○○が平成22年○○月○日に入院した当初の40分ほどしか用いず,その後は看護師に対し胎児の心拍数を1時間に1回確認することのみ指示を出し,隣接するとはいえ自らは自宅へ帰宅し,睡眠していたというのである。原告○○○の子宮破裂は,同日午前5時30分頃に発生したと推認されるところ,被告が原告○○○を診察したのは,早くとも原告○○○が分娩室に移動した午前6時10分頃であり,被告は,継続監視を怠った結果,原告○○○の子宮破裂の徴候を見落とし,又は子宮破裂直後に適切な処置をする機会を逸したものといわざるを得ない。原告○○○の分娩についてのみ,以上のような対応をとらざるを得なかった特別の事情は見当たらないところ,少なくとも原告○○○に関する限り,VBACを安全に実施するための上記義務を怠っていたといわざるを得ない。」
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