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医療過誤調査real estate

「If a man will begin with certainties,he shall end in doubts; but if he will be content to begin with doubts he shall end in certainties.」(フランシス・ベーコン)

調査の目的
弁護士の行う医療過誤調査は、@裁判における事実認定の見通しを知ること、Aその認定事実をもとに法的責任の立証見通しを知ること、が目的です.調査の結果、法的責任の立証が証拠上困難と判断される場合もあります.
患者ご家族のお気持ちに共感するあまり、裁判所の判断とずれてしまうことのないよう、できるだけ客観的に認定・評価することを心がけています.依頼者のご期待にそう結論にならないことも少なからずあります.

1 事実認定の見通しを知ること
患者ご家族は、医師の説明、医療行為に疑問を抱いた場合、まず事実を知りたいと願っていることと思います.裁判所は積極的に調査して事実を明らかにするところではなく、当事者から提出された証拠に基づいて事実を認定します。診療記録は医療側からみた事実を記載したもにすぎませんが、裁判所は、とくに専門家である医師・看護師らが業務上作成したものとして診療記録を重視します。そこで、診療記録等を入手し、診療記録以外も参考にしますが、主に診療記録等に基づいて裁判所が認定するであろう事実を前提するように努めています.

2 法的な責任の立証見通しを知ること
法的に責任が認められるのは、患者側が@義務違反(診療行為自体の注意義務違反または説明義務違反)、A相当因果関係,B損害をすべて立証した場合です.そこで、これらの立証の見込みを知ることが調査の目的です.
調査の対象は法的責任追及の可能性がある点に絞られます.ただし、依頼者がとくに或る特定の点に絞っての調査を希望する場合は、その点に絞って調査します.

記録等の収集
患者ご家族の記憶が薄れないうちに、経過メモの作成をお願いし、事実経過をお聞します.
客観的な事実認定のためには、診療記録のコピーが必要です.
診療記録等のコピーを入手するには,
@「カルテ開示」(患者による病院医事課への請求),
A「証拠保全」(裁判所による手続き)
の方法があります.
改ざんのおそれが高い場合は、時間と費用がかかりますが、証拠保全をお奨めしています.

相手方病院だけではなく、その前後の病院の診療記録等が必要となることも多いのですが、前後の病院の診療記録等については、改ざんのおそれがありませんので、「カルテ開示請求」によりコピーを入手いただいています.

調査・検討
1 認定事実の推認
弁護士が、診療記録等を精査し、法的判断のために重要と考えられる点を中心に「診療経過一覧表」を作成します.
依頼者に、「診療経過一覧表」をみていただき、御記憶と食い違いがないかを確認します.
事実関係を補充するため、前後の病院の医師に面談をお願いすることもあります.
事実関係を確認するため、相手方病院に説明を求めることもあります.
弁護士から、相手方病院に、公正な事故調査を求めることもあります.
以上の作業を経て、裁判所が認定するであろう事実を主に診療記録から推認します.

2 医学的評価
主に診療記録等から立証できる事実をもとに、その医学的評価(裁判所鑑定が行われた場合に鑑定人が述べるであろう医学的評価)を検討します.
医学的評価のために、ガイドラインのみならず、医中誌Web等を利用し、医学文献を収集します.海外文献にあたることもあります.多くの場合、医学的評価には第三者的立場の公正な医師の意見が必要となります.複数の診療科にまたがって、複数の医師の意見を聞くこともあります.協力医師の氏名等を教えることはできません.なお、協力医師の探索を依頼者に委ねることはありません.
医学的評価について相手方病院に説明を求め、相手方病院が医学的評価に争うのかを調べることもあります.

調査では、事案に適した公正な協力医師に意見を聞きます.
医療行為の理解・評価については、その事案に最も適切な専門の医師に面談・助言をお願いしています.調査に協力医師紹介会社は用いません.客観的公正な医学的意見を知りたいからです.なお、協力医の氏名等をお教えすることはできません.

3 法的評価
医学的評価と法的評価は異なります.
診療記録等から認定できる事実と医学的評価を前提に、これまでの裁判例から、その事案について、もし民事裁判になった場合、どのような法的評価がなされるか(責任ありとされるか、責任なしとされるか)、を検討します.医療として問題があるケースがただちに法的責任ありとされるわけではありません.望ましい医療が行われなかったとしても、医療水準をみたしていれば、注意義務違反にあたりません.注意義務違反があっても、因果関係が立証できなければ法的責任があることにはなりません.因果関係立証の程度が「高度の蓋然性」まで至らず「相当程度の可能性」にとどまるときは認められる賠償金は少額(裁判例では400万円が多い)です.

調査報告

弁護士は、以上の検討を経て調査報告書を作成します.弁護士は、依頼者に、調査報告書に基づき、裁判になった場合に認定できるであろう事実を前提に、過失・因果関係についての立証見通しがどの程度あるのか、を丁寧に説明いたします.

事実認定については、入手資料限りでの判断になりますので、必ずしも完全ではありませんが、それでも診療記録等を詳細に検討しますので、民事裁判になった場合に認定されるであろう事実はある程度予測できます.

法的責任の立証が或る程度可能と見込まれ(ただし、その程度には幅があります.)、患者ご家族に損害賠償請求の意思がある場合は、次の段階(交渉・調停・医療ADR)に進むことをお奨めしています.

調査の結果、法的責任の立証が証拠上困難と判断される場合もあります.その場合でも、説明・診療の過程に問題があると考えられるときは、依頼者のご希望があれば、再発防止、医療改善のために、病院にその問題点を具体的にお伝えするようにしています.

※ なお、必要に応じて、あるいはご希望に応じて、複数弁護士による調査体制を組むこともあります.

調査にかかる弁護士費用・実費

[弁護士費用]
弁護士の調査手数料は、20〜30万円+消費税です.調査事件の手数料は、調査結果如何にかかわらず、返金いたしません.

[実費]
実費は、協力医謝礼、文献収集費用、コピー代、郵送料、交通費などがかかります.証拠保全を行う場合は、証拠保全印紙代(500円)、証拠保全カメラマン費用等がかかります.

それぞれの事案の内容により、実費も異なってきますので、調査委任契約をお奨めする際に、実費の見込みについて、おおよそですの見積額をお示しいたします.

調査の手順 
       ≪調査委任契約締結≫
(依頼者)              
@調査手数料・預り金を振り込む
(弁護士)         
1)領収書を発行し依頼者へ送る
(依頼者)
A開示カルテを弁護士に送る
(弁護士)         
2)カルテをコピーしカルテを依頼者へ返送する
3)カルテを検討する
4)診療経過一覧を作成し依頼者へ送る
(依頼者)
B診療経過一覧を確認する
(弁護士)
5)医学文献を調査する
6)裁判例を調査する
7)協力医へ依頼する
8)協力医へカルテ・診療経過一覧・質問を送る
9)協力医と面談する
10)協力医意見聴取報告書を作成し依頼者へ送る
(依頼者)
C協力医意見聴取報告書を読む
(弁護士)
11)医学文献を調査する 
12)裁判例を調査する
13)調査報告書を作成し依頼者に送る
(依頼者)
D調査報告書を読む
  ≪依頼者・弁護士面談≫
(弁護士)
14)依頼者に面談で調査結果を報告する
15)カルテ等の資料を依頼者に返送する
16)費用明細書を作成し依頼者に送る
17)預り金を精算し,残金を依頼者に振り込む
※ 協力医意見聴取報告書・調査報告書を同時にお送りする場合もあります。
※ 交渉・訴訟等の段階に進む場合は,15)以降が「交渉委任契約締結」「訴訟委任契約締結」となります。
※ 場合によっては,事実関係について病院に質問したり,調査委員会設置を求めることもあります。
※ 調査期間は,6月から1年です。(診療科が複数になる事案,複数の協力医を聞く場合は1年と考えてください。)


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